2.ショッピングセンターの特徴
ショッピングセンターは複数の小売店舗が集まった商業施設ですが、近年は出店しているテナントも衣・食・住の商品群を取り扱う店舗だけでなく、映画館やスポーツセンター、レジャー施設、診療所など小売店舗以外のテナントが入っている商業施設が多く見られます。集客数が多いため、それに対応するための広大な駐車場を保有しています。テナントの多さや多様性から、来場者の滞在時間は長い傾向にあります。それに対応しての飲食店も数多く出店しており、レストラン街やフードコートがあるのも大きな特徴です。
運営側が不動産業であるため、テナントが短期間で入れ替わることも多く見られます。
2-1.建築用途としてのショッピングセンター
ショッピングセンター計画時の人員算定は、建築物の用途別によるし尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302−2000)の5.店舗関係のイ.店舗・マーケット又はロ.百貨店として計算されますが、映画館やレジャー施設、汚濁負荷の高い飲食店などのテナントも数多く入るため、各々の建築用途について別途算出し、合算することになります。
汚水量と濃度についても、JIS法の算定基準に加え、計画している集客数や、ショッピングセンターの規模、立地条件、テナントの種類から推定される来場者の滞在時間等を総合的に判断し、安全を見込んだ算定をする必要があります。特に、オープン時やイベント時の来場者による汚水量は、通常の算定から計算した計画汚水量の数倍に膨れ上がる場合もあるため、注意が必要です。排水時間も、通常は8時間としますが、実際の営業時間を確認し、前後1時間の店舗の準備・片付けの時間を考慮する必要があります。
2-2.ショッピングセンターからの流入汚水
ショッピングセンターから排出される汚水は、入っているテナントの種類や数、来場者の客層等によって千差万別ですが、特に注意が必要なものとしてレストラン街やフードコートからの厨房排水中の油脂があります。通常、各テナントの厨房内、又はショッピングセンター建屋の外に数店舗分をまとめてグリストラップが設置されていますが、日常管理がテナント側の責任になっていることが多く、適正に清掃・管理されているとは言い難いのが現状です。
図1はあるショッピングセンターの厨房除害施設の流入排水中に含まれるノルマルヘキサン抽出物質(油脂分)の経年変化をみたものです。各テナントにはグリストラップが設置されていますが出口側のn-Hex濃度は、概ね200mg/Lで推移しています。
また、計画時とテナントが入れ替り、既設のグリストラップの容量が新しい飲食店に対して不足する場合や、中には通常の小売店が飲食店に替わることもあります。従ってこうしたテナントから排出される厨房排水は油脂濃度が非常に高くでる傾向にあり、あらかじめ浄化槽の前段に除害設備を設置する必要があるケースもあります。
2-3.浄化槽の設置場所、臭気の問題について
ショッピングセンターには広大な敷地があるため、余裕のある保守点検スペースを確保した設置が期待されますが、実際には少しでも店舗面積や駐車場面積を多く取るために、駐車場又はバックヤードへの設置となる傾向があります。そこは頻繁に浄化槽の上を車輌が通過するために保守点検作業に支障が生じ、また営業時間帯に来場者に不快感を与えるため、開店前までに作業を終わらせるという時間的制約を課せられる場合がしばしばあります。また、設置場所は臭気の問題とも密接に絡んできます。浄化槽の設置は建物の構造を考慮し、浄化槽は出入り口はもちろんのこと、バックヤードの搬入口付近の設置も避けたいところです。同じ理由で空調設備に隣接するのも可能な限り避けたいです。これらの配慮を怠った場合、臭気が店舗内に侵入する恐れがあります。排気管の吹き出し口は、周囲への影響が小さいところを選ぶべきです。空調設備の外気取り込み口付近は絶対に避けてください。稀に、店舗敷地内では臭わなくても、遠く離れた高層マンションから臭いの苦情が来ることもあります。可能であれば、排気の脱臭装置も併せて設置することを強く推奨します。
最後に、浄化槽工事の範囲に入ることは少ないですが、ショッピングセンターは店舗面積が大きい上に、階数が低いことが多く、排水管の距離が長くなる傾向があるため、汚水の移送に中継ポンプ槽を用いる事が多くなります。汚水が滞留するために悪臭の原因となる箇所であり、また、中継槽で腐敗した汚水を浄化槽が受け入れることで、浄化槽でも悪臭が発生することがあり、排気管や防臭蓋等のような対策を講じていない場合に臭気トラブルの要因となります。ポンプの被りの分だけ汚水を溜める構造になっている場合、夜間の滞留時間により発生する硫化水素により中継槽のコンクリート部分が腐蝕することもあります。
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